最強男子はあの子に甘い
好き!
 結局、永田くんが襲われた以外には他校生とのバトルは発生しないまま。
 警戒はつづけているようだけど、下校時の私への護衛も外れて数日がたった。

「奴ら、俺の強さにビビったな!」

 永田くんが自分の手柄だとばかりに、五対一でのケンカに勝ったことを毎日自慢してくるのが平和な証拠である。
 でも五人に囲まれても負けなかった永田くんの功績は確かに大きい気がした。

「永田くんに勝てなかったら、彗くんに勝てるわけないもんね!」
「たけるはさ、たまには素直に俺を褒めろよ」
「褒めてるよ?」

 湯川くんがきょとんとして答える後ろの席で、永田くんが納得いかなそうにふくれている。
 相変わらず私たちは三人でお昼を食べたあと、授業がはじまるまで他愛のない会話をしていた。

「永田くんより彗くんが強いことはわかるけど……」
「紗宇までそういうこと言う?」
「乙部さんと永田くんはケンカしたらどっちが強いの?」
「それはまあ、そうだなぁ……五分、ってところじゃねぇ?」

 自席で腕組みして目をつぶり、考える素振りをしたあとふんぞり返って永田くんが語る。
 そのそばにはいつの間にか、どこからともなく現れた乙部さんの姿があった。
 私と湯川くんは笑顔でたたずむ乙部さんの存在に気づいてぎょっとする。
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