最強男子はあの子に甘い
「五分……いや、いい勝負にはなるだろうけど、俺が勝つな!」
「興味深い見解ですね」
何も知らないまま気持ちよさそうに語った永田くんの背後から、乙部さんがにこやかに言い放った。
その瞬間、椅子から転げ落ちそうになるほど驚く永田くんが青ざめている様子から、本人不在を良いことに私たちの前では大口を叩いていただけのようだと察する。
永田くんはあっという間に姿勢を正して座ると、手を膝の上におき、見たこともないくらいのお行儀の良さだ。
どう見ても乙部さんのほうが強い。
でもそれは上下関係が強く作用しているようでもあり、拳を交えた力関係は謎のままに思えた。
「な、何かあったんすか?」
「いえ、拍子抜けするほど何もないですね。なので周辺の警戒を解こうかと思ったんですけど、どうも他校生が桜辰を潰すために仲間集めをしているとの噂が耳に入りまして」
「俺は十対一でも勝ちますよ!」
「それは頼もしい限りですが、噂が事実だとすると恐らくは……もっと手段を選ばずに何か仕掛けてくる気がしています」
「じゃあ、どうするんすか?」
「このまま警戒をつづけます」
「それだけっすか?」
「それだけですね、今出来ることは。噂が事実かもわからないので……ということで、今僕がお話した現状を彗さんにご報告お願いします。榎本さん」
「はい?」
「興味深い見解ですね」
何も知らないまま気持ちよさそうに語った永田くんの背後から、乙部さんがにこやかに言い放った。
その瞬間、椅子から転げ落ちそうになるほど驚く永田くんが青ざめている様子から、本人不在を良いことに私たちの前では大口を叩いていただけのようだと察する。
永田くんはあっという間に姿勢を正して座ると、手を膝の上におき、見たこともないくらいのお行儀の良さだ。
どう見ても乙部さんのほうが強い。
でもそれは上下関係が強く作用しているようでもあり、拳を交えた力関係は謎のままに思えた。
「な、何かあったんすか?」
「いえ、拍子抜けするほど何もないですね。なので周辺の警戒を解こうかと思ったんですけど、どうも他校生が桜辰を潰すために仲間集めをしているとの噂が耳に入りまして」
「俺は十対一でも勝ちますよ!」
「それは頼もしい限りですが、噂が事実だとすると恐らくは……もっと手段を選ばずに何か仕掛けてくる気がしています」
「じゃあ、どうするんすか?」
「このまま警戒をつづけます」
「それだけっすか?」
「それだけですね、今出来ることは。噂が事実かもわからないので……ということで、今僕がお話した現状を彗さんにご報告お願いします。榎本さん」
「はい?」