最強男子はあの子に甘い
「俺、今まであんまりちゃんと恋愛してこなかったから。それだけのことでけっこう悩んで……ああ、紗宇のこと好きなんだって、自分の気持ちに気づいた」

 彗くんが私を好きだと告白してくれたことに驚く。
 大切そうに打ち明けてくれた気持ちにしっかりとこたえたくて、彗くんを好きな気持ちと一緒に、誤解して傷ついた気になってしまったこと。
 そして彼を悩ませてしまったことを詫びようとした。
 
「……私は、彗くんと姫がお付き合いしているように見えて。……本当は、自分が彗くんにとって特別な女の子になりたいと思ってるんだって気がついて……ヤキモチ妬いて、あの日は彗くんと目も合わせられなくなって……」
 
 途切れ途切れに、けれど正直に打ち明けると彗くんはそんな私をそっと抱きしめる。
 入学式のときに庇われて抱きしめてもらったときとはまた違う、彼の優しさやぬくもりが伝わってくる気がした。
 制服が吸い込んだお日様の匂いと彼の香りが混ざり合い、鼻に届くとあたたかくてどこかくすぐったい。

「蜜姫と俺はそういう仲じゃないよ」
「乙部さんもそう教えてくれました。……きっと、私が彗くんを好きな気持ちに気づくよりも先に、私の気持ちに気づいてたんだろうなって思います」
「それは俺も、おそらく乙部には早くから見透かされてる」

 ふっと笑いを零して見つめ合う。
 すると彗くんは私の前髪を指先で掬い分けて、無防備になったおでこにちゅっとキスをした。
 嬉しさとともに熱くなっていく顔を覆いたくなった私は、彗くんの胸にとんと頭を寄せる。

「紗宇は俺にとって特別な女の子だから」
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