最強男子はあの子に甘い
 入学式は体育館で行われた。
 式がはじまり形式的にはそれらしく進行していくけど、新入生はと言えば自由過ぎるほど自由に好きな場所に陣取りつまらなさそうに欠伸をする者もいれば、周りと意気投合しはしゃいでいる生徒もいる。
 そして、一部には殺気立っている男の子も見受けられた。
 入学式と言うよりは即興のパーティー会場かと思うほど賑やかだ。
 
 私は出来るだけ端のほうで式の進行をぼんやり見つめていたけれど、どちらかといえば式よりもそういった周りの新入生たちを観察をしているほうが楽しい。
 進学先として選んだのはあながち間違ってもいないのかもしれない。
 そして女子を珍しがる生徒はいても、乙部さん効果だろうか。
 囲まれたり絡まれたりなんてことは起こらない。

「賑やかだよね」

 囲まれるどころかひとりポツンと、体育館の端にいた私へ声をかけてきた男の子がいた。
 ケンカが強そうには見えなくて、すっきりとした五分刈りの頭が素朴さと真面目さを演出している。
 体も大きくはない。
 けれどそういったごくごく平凡そうなところに少しほっとする気持ちを覚えるのと同時に、挨拶みたいにさりげなく声をかけてもらえたことが、うれしかった。
 さすがにこのままひとりぼっちもちょっと心細い。
< 5 / 104 >

この作品をシェア

pagetop