最強男子はあの子に甘い
「……お母さん、ほっぺつねって」
「えー何?夢みたいなことでも起こったの?安心しなさい現実だから。ほら」

 夢か現かと玄関マットの上に転がっていた私に、お母さんはしゃがんで目線を近づけると千円札を広げて見せた。
 何が言いたいのかわからず眉を寄せ大きく首をかしげると、お母さんににっこり微笑まれる。

「玉子買い忘れちゃったの!おつかい、よろしく!」

 私の手に千円札を持たせ、お母さんは両手を合わせて私を拝み、おつかいの指令を言い渡した。
 確かに現実だ。浮かれている私以外、通常運転である証拠でしかない。
 けれど幸せいっぱいの私は、しょうがないなぁと渡された千円札を制服のポケットにしまって行って来ますと再び家を出た。
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