最強男子はあの子に甘い
 横断歩道の歩行者信号が青へと変わった瞬間に、私は走って二人を追いかけた。
 追いつき追い越すように私はすぐさま姫の手を掴んでいる男の前に立つ。

「い、嫌がってるから、離してあげてください!」
「なんだ?お前?」
「と、友達……のような?ものです……!」
「紗宇ちゃん……!?」

 しどろもどろに答える私が現れたことに姫は驚き、他校生は黙った。

 しかしその沈黙は長くつづかない。
 すぐに彼は口の端をゆっくり持ち上げるようににやりと笑う。
 その笑みを不気味に思ったときにはすでに遅く、気がつくと先ほど駅前で散り散りに点在していた他校生がいつの間にか私たちを囲んでいた。
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