最強男子はあの子に甘い
私のヒーロー!
 何の因果だろうか。
 私と姫が脅されるように連れて行かれたのは、懐かしい公園だった。
 昔、小学生の頃の私がいじめっ子たちから彗くんに助けてもらった場所である。
 あのときみたいに彗くんがヒーローのごとく現れて助けてくれるかもしれない。
 そんなおこがましいことを願うよりも、なんでも首を突っ込んでしまう私は今度こそ彼に呆れられてしまうかもしれないと思った。

 公園の中央で、他校のヤンキー六人が輪になって私と姫を囲む。
 そっと私の手を握ってきた姫の手は少しだけ震えていた。
 私はその手をぎゅっと握り返す。
 怖くないと言えばただの強がりだが、私たちを公園へと連れて来た他校生も、囲んできたその仲間も、見た目は確かに尖ったヤンキーなのにあまり強さみたいなものを感じない。
 桜辰にすっかり染まってしまったらしい私は、どうもヤンキーの風格の有無くらいはわかるようになった気がするのだ。気のせいかもしれないが。

「井原がこいつら助けになんて来んの?」
「来るよ。バカみたいな正義感で、かっこつけて一人でな」
「仲間、連れて来る可能性は?」
「仲間の数なんて知れてるさ。作戦通りで十分だ」
「だなぁ。……なあ、お前らどっちかが井原の女だったりすんの?」

 六人のうちの一人が、にやつきながら私と姫の顔を交互に覗き込んでくる。
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