最強男子はあの子に甘い
「うん。桜辰に来たって感じがする」
「ああ、それあるよね!僕は相手にもされないけど。まあ、ケンカが強いわけでもないからなぁ」
「……どうして桜辰に?」
「憧れている人がいるから!あと……」
穏やかな会話がつづきかけたところで体育館が一度、急に静まり返った。
式を進行していた先生の声まで止まって、声をかけてくれた男の子と私も思わず黙る。
周囲の視線の先が体育館の入り口に集中しているのにつられてそちらを向いた。
すると見たことのある男子生徒がにこやかに式の会場へ入場よろしく、体育館に足を踏み入れる。
入学式の前に出会った、乙部さんだった。
そして、少し間を置いてもうひとり。
乙部さんより少し背が高いだろうか。
学ランを肩に羽織り、ズボンのポケットに手を入れ、真っすぐに前を見つめる瞳にかかりそうなくらい伸びた前髪。
明るいブラウンヘアーが色白な肌に映える。
横顔だけでも乙部さんに引けを取らない美しさで、それでいて何者も寄せつけないオーラがあるのに目を奪われてしまうほど魅力的にも見えた。
不意にその横顔がこちらを向いたとき、「あ……」と小さく声をこぼしそうになる。
しかし実際に声を零したのは私に話しかけてくれた男の子のほうだった。
「彗くんだ……」
まるで私の心の声を代読するように、彼はそう呟く。
「ああ、それあるよね!僕は相手にもされないけど。まあ、ケンカが強いわけでもないからなぁ」
「……どうして桜辰に?」
「憧れている人がいるから!あと……」
穏やかな会話がつづきかけたところで体育館が一度、急に静まり返った。
式を進行していた先生の声まで止まって、声をかけてくれた男の子と私も思わず黙る。
周囲の視線の先が体育館の入り口に集中しているのにつられてそちらを向いた。
すると見たことのある男子生徒がにこやかに式の会場へ入場よろしく、体育館に足を踏み入れる。
入学式の前に出会った、乙部さんだった。
そして、少し間を置いてもうひとり。
乙部さんより少し背が高いだろうか。
学ランを肩に羽織り、ズボンのポケットに手を入れ、真っすぐに前を見つめる瞳にかかりそうなくらい伸びた前髪。
明るいブラウンヘアーが色白な肌に映える。
横顔だけでも乙部さんに引けを取らない美しさで、それでいて何者も寄せつけないオーラがあるのに目を奪われてしまうほど魅力的にも見えた。
不意にその横顔がこちらを向いたとき、「あ……」と小さく声をこぼしそうになる。
しかし実際に声を零したのは私に話しかけてくれた男の子のほうだった。
「彗くんだ……」
まるで私の心の声を代読するように、彼はそう呟く。