最強男子はあの子に甘い
(やっぱり……)

 心の中で頷く私は、すっかり大人びいた高校生の彗くんから目が離せなくなる。
 一度目は合ったものの、彗くんは何事もなかったかのように正面を向いて体育館の入り口に寄りかかり、腕組みをした。
 そのそばに立つ乙部さんが、式の進行を務めていた先生につづけるように促すジェスチャーをする。

 再びマイクから先生の声が聞こえてくる中、私も含めて皆が皆、彗くんから目が離せない。

「知ってる?学ラン羽織ってるのが桜辰トップの井原彗くん!……で、そのそばにいるのが二年トップの乙部伊織さん!うちは学年ごとに一番強いと認められた人が校内で中心になるんだけど、彗くんは一年生のときに当時三年生のトップに勝ってからずっと桜辰で一番強いんだ!」

 耳打ちするように私に再び声をかけてきた男の子は、どこか興奮気味だ。
 彼がさっき言っていた『憧れている人』というのは、彗くんか乙部さんのことなのかもしれない。
 どちらも確かに見た目だけでも魅力的で、オーラがある。
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