最強男子はあの子に甘い
 ただでさえ目立ちに目立つメンバーの先頭を任され、私はお弁当を御守りみたいに抱きしめて廊下を歩く。
 私たちを珍しそうに見る目や、何事かと驚く生徒、見知らぬ先輩に頭を下げられたりもした。
 そんな屋上までの道のりを私は早足で進む。
 屋上の扉の前に着くと、桜辰生の視線から解放されてほっと一度、大きく息を吐いたのも束の間。
 
 次の関門は彗くんに突然押しかけた私たちのことをどう説明するかである。
 どう考えても、私がこのメンバーを誘ったなんて言い分は無理があるように思えた。
 かと言ってここまで来た私たちを怒って追い返すような人でもない。
 意を決して扉を開けようとしたそのとき、自動ドアみたいに扉が開く。

「何やってんだ?」

 扉を開けたのはもちろん屋上の主、彗くんだ。
 彼に問われてみんなの視線が私に突き刺さるように向けられる。

「き……きのうの、お疲れ様会でも……みんなで、どうか、なぁと……?」

 私がたどたどしく答えるのを聞いて彗くんはメンバーの顔を確認し、仕方がないと言いたげに息を吐いて屋上への立ち入りをあっさり許した。
 お菓子やお弁当を抱えたみんなが、嬉しそうに私の後ろから解放的な屋上へと飛び出して行く。
 自然と輪になって、お菓子やお弁当を広げていく様子を見て「ピクニックかよ……」と彗くんは呆れたように笑ってた。
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