最強男子はあの子に甘い
「大反対されましたけど、僕は文武両道を掲げて貫いてますから。今はもう家族も見守ってくれてますよ」
「女の子をわずらわしく思うほどの乙部くんには、実はすでにとってもかわいい彼女がいたりして?」

 姫の問いかけに、私はびっくりしながらもドキドキとその答えを待つ。
 彼が湯川くんと同じように、さらっと彼女がいると言い出してもおかしくない気がした。

「いてもいなくても、僕が小坂さんに言うわけないじゃないですか」
「ですよねー……」

 さわやかにどちらとも教えてくれず、なおかつ姫を攻撃しながらも見事に逃げてしまうあたりさすが乙部さんだ。
 乙部さんに恋人がいるのか、いないのか。
 わからなかったのは私としてはちょっとがっかりである。
 恋人がいるなら会ってみたいし、いないのならそれはそれで、乙部さんが恋に落ちたときには応援したい。
 私と彗くんの背中をそっと押してくれたように。
 
「俺は姫が桜辰に来た理由が聞きたいっす」

 次に質問とともに手を上げたのは永田くんだ。
 話をふられた姫は膝を抱きながら、その膝に一度、顔を埋める。
 さっきまでの元気がどこかへいってしまったようにも見えた。
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