最強男子はあの子に甘い
「……私は、お友達作るのが下手だから」
「あー……」
「そんなにすぐに納得しないでよ!もう!……女の子が苦手なの、嫌われるから!嫉妬されるのも面倒臭いし!お世辞も嫌だし!そういうわずらわしさから逃げたくて選んだのが桜辰だから……乙部くんのこと、ちょっとわかる気がしてる……」
「どうしたんですか?変なものでも食べました?」

 姫をからかいながらも、乙部さんの表情はやわらかく優しい。

「もしかして、姫はケンカが強いんですか?」

 今度は私が手を上げて質問をすれば、姫は小さく首を横に振る。

「護身術くらいはって習い事で身につけてたけど、一対一で相手に隙がなければ通用しないと思う。……きのう、投げ飛ばせたのも相手が完全に怯んでたからで……」
「今回の騒動は、雑魚の寄せ集めで助かったのは事実ですね。……とは言っても、その中でいざとなったら自分の身は自分で守ってくれたのはありがたかったです」
「ほんと、心得のある蜜姫が動いてくれて助かった。紗宇のことも守ってくれようとしてたんだろ?」

 乙部さんと彗くんが姫を褒めると、彼女は素直に喜んで誇らしそうに笑った。

「だって紗宇ちゃんにケガさせたら、どんな処分が待ってるかわからないんでしょ?」

 姫がにこにこしながらそう言って彗くんの反応を伺っている。
 どこかで聞いたことがある言葉だ。
 彗くんが私の隣で、姫のセリフを困り顔で笑った。
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