最強男子はあの子に甘い
「榎本さんの入学を知ったときから、すでに気が気ではなかったように見えてましたけど?」
「……そうだったんだろうな」

 乙部さんに言われて、彗くんは思い出すように目を細めながら頷いた。
 
「俺、紗宇と一緒のときに襲われなくてマジでよかった……」
「よくないよ。圭音にはケガさせることになった、ごめんな」
「いや!あーでも……公園にいたのは雑魚ばっかだったのに、俺のこと襲って来た奴らはそれなりに手応えあったんすけどねぇ……」
「圭音を襲ったのはそれなりに強かったんだよ。でもそいつらが圭音に負けたことで、雑魚以外、相手の強さがわかる奴や賢い奴は今回の騒動に加勢することなく手を引いた。……それが俺に入って来てる情報だから、雑魚だけで済んだのは圭音のおかげだと思ってる」

 五対一での戦いを思い出しながらしゅんとしおれていた永田くんのことを彗くんが讃えると、彼はあっという間に元気を取り戻しガッツポーズを決めた。
 
「いろいろあったけど、でも……おかげで仲良くなれた気がしてうれしいな」

 独り言みたいな湯川くんの呟きは、私が思っていたことと同じだ。
 同意の笑みを浮かべると、みんなも静かにそれぞれ微笑みを浮かべていた。
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