最強男子はあの子に甘い
二人きり!
 「紗宇」

 一日の授業を終えて帰り支度をしていると、突然、彗くんの声が頭に降って来た。
 びっくりして顔を上げると彼が私の前に立っている。

「少し、時間いい?」
「も、もちろん!です!」
「じゃあちょっと、屋上行こっか?」
「は、はい!」

 彗くんの声と表情は穏やかなのに、私が緊張しすぎているせいで“何かやらかして先輩に呼び出しを食らった一年生”に見られている気がしてならない。
 湯川くんと永田くんに手を振って、私は彗くんの後を追うように歩いた。
 何か大事な話でもあるのだろうか?
 彼が私をわざわざ屋上へと連れて行くなんて、それこそ何かやらかしたのかと不安になってくる。

 ――そうだ、昼休みにみんなを引き連れて屋上へと押しかけたんだった。

 でもあれは、言い出したのが私ではないことを彗くんは知っている。
 怒っているようにも見えなかった。
 いやしかし、みんなの前では私を叱れなかっただけで実はとても腹立たしかった。
 そう考えることも出来る。
 これは……私が本当に呼び出しを食らってしまった可能性も捨てきれない。

 屋上に入って扉が閉まると、私は彗くんに向かって勢いよく深々と頭を下げる。

「ご、ごめんなさい!」
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