最強男子はあの子に甘い
「……どうした?」

 突然、全力で謝罪する私を彗くんはとても心配した。

(あれ?怒ってない……?)

 私が恐る恐る顔を上げれば心配しながら私の言葉を待つ彼がいる。

「お、お昼休みに……みんなでここへ押しかけちゃって……」
「まだ気にしてたの?」
「ええ~と……その、彗くんに屋上へ連れて来られる理由が、わからなくて……?」
「俺に怒られるとでも思った?」
「……お、思ったんですけど、でも……彗くんは怒るような人じゃないこともわかっているような……」

 私が悩みながら答えるそばで、彗くんはこらえられないとばかりに、ふっと吹き出して可笑しそうに笑った。

「紗宇が怒って欲しいなら怒るけど?」
「優しい彗くんでお願いします……」

 そう答えた私を彗くんは大事そうに抱きしめてくれる。
 髪を梳くように優しく頭を撫でられて、その私の頭に彼の頬がすり寄せられた。
 甘えられるような感覚を覚えて、その存在だけでも恐れられるほどに強い彼のギャップにドキドキと胸が高鳴る。

「……俺が紗宇を屋上へ連れて来たのは、紗宇と二人きりになりたかっただけだよ」

 彗くんが甘い吐息とともに耳元にささやいた。
 その吐息と声の甘さにぞくりと体が震えてしまう。
 そんな私をぎゅっと抱きしめ直して、彗くんは私の耳にキスを落とした。
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