最強男子はあの子に甘い
「帰したくない……」

 学校からの帰り道、私を家へと送り届けるために隣を歩く彗くんは、ため息をつきながら何度そう呟いているだろうか。
 私はそれを聞く度にうれしくて幸せでくすぐったい気持ちになる。

 屋上でじゃれ合っていても私の家族が心配しないようにと、彼は時間をとても気にしてくれた。
 しかしいざ帰宅となれば、私のことを離したくないらしい。

「帰りたくない、って……私が言ったら彗くんはどうするの?」
「困る」

 悪戯に問いかけた私に、彗くんはすぐにそう答えて笑った。

「私……桜辰に入ってなかったら、彗くんは思い出のままだったんだろうな……」
「それはそれで、違うかたちで紗宇とは再会してたと思うけど」
「……彗くんて、ロマンティスト?」
「かも。……でもそう思いたい」
 
 それくらい好き。
 そう言ってもらった気がする。
 何があっても私たちは結ばれる運命なのだと、私もそう信じたい。
 
「……彗くんは、どうして桜辰に?」
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