最強男子はあの子に甘い
「後輩も出来て、慕ってくれる奴が増えていくほど、そいつらに俺が背中を見せつづけられるほど強くありたいって思うようになれたのかもしれない」
「彗くんには、そのほうが似合うと思う」
「紗宇の前でかっこつけられたしな。……たけると蜜姫と仲良くなってから、紗宇のことよく思い出してた。昔、紗宇を助けたあとも、紗宇と仲良くなれてたら楽しかっただろうなってなんとなく」

 私が湯川くんから、彼が彗くんにピンチを助けてもらったことと、それから仲良くしていることを聞いたとき。
 
 『いいなぁ……』

 とこぼしたことを思い出す。
 私も彗くんと仲良くなりたかった。

 “紗宇と仲良くなれていたら――”

 同じように考えてくれてたなんて思いもしない。
 
「私も仲良くなりたかった。……でも、引っ越しなんて追いかけられないし」
「はは……でも、桜辰に来てくれただろ?」
「それは……家から近かったからで……」
「俺は嬉しかったよ。どんな理由でも。入学者として紗宇の名前を乙部から聞いてからずっと」
 
 そう言って、彗くんは立ち止まって私を抱きしめた。
 家まであと、少し。
 
(帰りたくない……)
 
 でも、困らせたくない。
< 90 / 104 >

この作品をシェア

pagetop