最強男子はあの子に甘い
「彗くん、家……もうすぐそこだから。今日はここで……」
「……ん」
「で、でも、もう一度。お別れの前に、キス……とか」

 私が照れながらもキスをねだると、彗くんはふっと微笑んで私のおでこにちゅっと口づける。
 期待していた私の唇がしょんぼりと落ち込んだ気がした。
 
「また、明日な」
「う、うん……」
「そんなにがっかりした?」
「ちょっとだけ……」
「帰したくないって言ってる俺に、キスねだったり、かわいいこと言ったり。……明日、覚えとけよ?」

 不良校生徒らしい捨て台詞を吐くと、彗くんは笑って私に手を振り背を向ける。
 私はキスしてもらったおでこを撫でながら、彼の背中が小さくなるまで見送った。
< 91 / 104 >

この作品をシェア

pagetop