最強男子はあの子に甘い
「ただいまー」
「おかえり~!寄り道でもしてたの?」
 
 私が帰るとお母さんは少し心配でもしていたのだろうか。
 すぐに玄関へ来て私を出迎えてくれた。
 
「う、うん!」
「……ああ、なるほど。さては井原くんとデートか」
「え……!?」

 母親の勘の鋭さは恐ろしい。
 いや、私がわかりやすいだけかもしれない。
 お母さんには恋人として挨拶を済ませている彗くんの存在を知っているのだから、私が彼と過ごしていることなどすぐに察しはつくだろう。いやしかし。

「紗宇って、隠し事ヘタって言われない?」
「……言われる」
「そうよねぇ……でも、そういうところがかわいいのよね、きっと」

 チャームポイントととして『隠し事はヘタ』というのもいまいちパッとしないような。
 かわいいと言われても、私にはただの短所に思えてしまう。

「井原くんを射止めたかわいい紗宇ちゃんは、井原くんのどういうところが好きなの?」
「……私が泣いても、泣き止むまでそばにいてくれるようなひとで。危なっかしい私のことを、放っておけないって言って守ってくれる……強くて、優しすぎるほど優しいところ」

 うっかり惚気てしまうと、母は娘の惚気によろめきながら「ごちそうさま……」と小さく呟いた。
< 92 / 104 >

この作品をシェア

pagetop