推しグッズvs大人気アイドル 胸キュン溺愛対決


 両親に見つかった光くんは、タタタと逃げ出すと思った。

 それなのに彼は、両親の前に自ら駆けていって


 「陽葵のお父さんとお母さんだ。お会いできて光栄です」


 目をキラキラさせながら、お父さんの手を両手で包み込み上下に振っている。

 見た目がちょっと怖そうなのに、コミュ力高いのかな。



 ワイルドな大型犬に懐かれて戸惑っているみたいになっているわたしの両親。

 目が点のまま、夫婦で顔を見合わせている。



 「えっと……君は……」

 「陽葵さんの宝物のペンライトです」



 さわやか笑顔の光くんの八重歯が月夜で光った。

 ひゃっ、それストレートに言っちゃうんだ。

 うちの両親が信じるわけないよ。



 「今、ペンライトって言ったのか?」



 温厚なお父さんの顔がこわばっている。

 お母さんなんてスマホを取り出しちゃったし。

 110番に電話をかける気だ。



 私もまだ光くんがペンライトだって信じたわけじゃない。

 でも悪い人ではなさそうで。

 なんとかこの場をごまかさなきゃ。

 警察を呼ばれちゃうその前に。


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