推しグッズvs大人気アイドル 胸キュン溺愛対決


 このあたりに落ちているはずなんだけどな。

 月明かりだけじゃうす暗くて見あたらないか。

 懐中電灯を取りに家に戻るのが得策っぽい。



 捜索は一時中断にしますと、まわれ右をした時だった。


 「っ、痛ぁ」


 後ろから、うめき声が聞こえたのは。



 誰かいるの? 

 恐る恐る振り返る。

 人の気配はない。

 よかったぁ、空耳か。


 そんなことより、今はペンライト探しに集中しなきゃ。

 懐中電灯を取りに家に戻って……って。



 うわっ、カサカサ聞こえる!

 目の前の生い茂ったつつじの葉っぱが、風がないのにワサワサ動いてる!



 つつじの茂みの中に誰かいるんだ。 

 うめき声の主? 

 待って、怖いよ、今すぐ逃げなきゃ。



 筋肉に力をこめようとするも、足が震えすぎて動けない。

 恐怖が神経にまで伝染してしまった。

 金縛りにあったように固まったまま、闇夜の怪物のように葉を揺らすつつじの茂みを見つめる。

< 6 / 53 >

この作品をシェア

pagetop