相談室のきみと、秘密の時間
二人で話す間、どんどん伸びていった夕日が一番強い光をしっかりと部屋の中に焼き付けたあとに静かに消えていき、夏の湿った空気をまとった闇と悲しげな鈴虫の鳴き声がどこからともなく私たちを包んだ。

村越さんはいつの間にか私を見るのを止めて、部屋にかかっているなんでもないカレンダーを見つめていた。

初めて会ったはずなのに、彼とこの先もこうして話したいと思った。

「あんまり遅いと御家族が心配するね。僕はここに水曜日と金曜日に来る。でも放課後には君以外、誰の予約も受けないから。その曜日だったらいつ来てくれても大丈夫だと思う。またゆっくり話そう」

「はい。今日はありがとうございました。必ずまた来ます。よろしくお願いします」

「よろしくね」

すると村越さんは思い出したように、

「君を救うことは僕が救われることでもあるんだと思う。君に希望を忘れないでほしいのは、僕も希望を見つけたいからなんだ」
と言って
「わがままで、ごめんね」
と小さな今にも消えてしまいそうな声で付け加えた。

私はその瞬間に全身が震えたつほどに、村越さんのことしか、見えなくなった。

彼もまた、この世界に必死に溶け込もうとして上手くいかなかった私と同じ人間だということが分かったから。

そのことに気づいているのは、まだこの世界で二人きりであることが、私は少しだけ嬉しかったんだ。
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