相談室のきみと、秘密の時間
「希望を忘れないで」

でも、今日出会ったばかりの村越さんはそう言った。
希望ってなんなんだろう。
今以上に何か光るものが、私の抱えるこのモヤモヤを一気に晴らしてしまうような何かが、この先の人生にもちゃんと待っているのかな。

私は怖い。
変わることも変わらないことも両方。
だから決してこのレールから外れるわけにはいかない。

あれから二日が過ぎた。
今日は村越さんが相談室にいるはずの金曜日。

今日も山の中の田舎とは思えないほどに暑くて、ミンミンゼミはうるさいほどに鳴いていて、太陽はプリズムみたいに輝いていた。

「田舎ってつまんないなぁ」

誰も見てないからひっそり都会風をふかせてみた。
何にもないし、面白くない。

それでも私は夏休みもほぼ毎日のように登校し、自習室で問題集を解くか夏休み明けの授業の予習をしていた。
いつも学校で仲良くしている友達も、誰一人として遊びに誘ってくることはなかった。

私たちはこの学校の中で必要のある時にだけ友達になり、あとは何のつながりもない割り切った存在だった。

「でも…」

悪いことばっかじゃない。
きっと今日の夕方、あの場所には村越さんがいる。
私は少しだけ切なくなった。

色のない毎日に初めて暖かな色のインクが混じったような気がした。
そんな知らない感情の苦々しさや不確かさを嬉しく思った。
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