相談室のセンセイと、秘密の時間
「本当はずっと待っていた。あの場所にいつか君が現れてくれるって」

「どういうことですか?」

「まだもうちょっとだけ秘密にしていて。僕は僕で、君は悩める学生の高遠さんのままでいて。

僕は今こうして君の近くに居られるだけで本当に幸せだから。いつかはちゃんと話すから、もう少しだけ、ね」

言葉は私から自然とあふれた。
そんな私の切実さに、村越さんはその手を取って、その上しっかりと抱きしめて応えてくれた。

私は何をしたって村越さんには全然適わない。
分からないことも沢山ある。

「海に入ってくれますか」

それでも私はその深淵に手を伸ばす。

「うん、いいよ」と村越さんは私からまだ遠いけれど、その時確かに本物の笑みを見せてくれた。

海はやっぱりもう冷たかったし、寒すぎて5秒で陸に上がったけれど、私にとって初めての大好きな人と海に入ったかけがえのない思い出になった。
< 35 / 66 >

この作品をシェア

pagetop