相談室のセンセイと、秘密の時間
4. このまま時間が止まっちゃえばいいのにね
夏休みが明けて2学期になった。
だけど私の日常は相変わらずで何事もなかったかのように授業だけが再開した。
先生たちも友達も特に変わっていないように見えた。

私だって変われているかはまだ分からないけれど、いくつかの行動を起こした。

それは主に村越さんと出会えたからできたこと。
まず、2学期明けに提出する予定だった進路希望表に、心理学部のある大学を書いて提出した。

正直な気持ちを言うと、私はまだ本気で心理学を学びたいと思ってない。
けれど、村越さんや村越さんを結びつける心理学という学問に興味を持ち始めていた。

担任はわざわざ私を呼び出し、これまで理系科目を選択していたことを心配してきたけど、まあ君の成績なら不可能でもないから頑張れとだけ言い、こうしてあれだけ悩んでいた進路希望表はすんなりと受理された。

そしてもうひとつは、村越さん自身のことだった。

夏休み明けの金曜日の放課後にはじめて相談室を訪れた時、私はあの海でのハグを思い出して緊張してしまいまともに村越さんの顔を見ることができなかった。

一方村越さんはいつもと変わらない笑顔と冷たいアイスカフェオレを用意して迎えてくれた。

いつものソファに腰かけると、何とか平静を装いながら

「まだはっきりと決めたわけじゃないけど、心理学部のある大学を進路希望表に書いた」と言った。

すると村越さんはそれを聞いて転げ回らんばかりに笑った。
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