相談室のセンセイと、秘密の時間
「腹がよじれそうなんだが。君はあの話を聞いた後にわざわざ心理学部を選ぶなんて相当変わっている。それに今理系のクラスだって言ってなかったっけ?」

「理系ですが来年から転科できます。私の国語や英語の成績であれば問題ないと担任が言っていました」

「それはそうなんだろうけど。心理学にも統計処理や科学的思考が必要だからあながち文系とか理系とかはっきりと分けて考える必要はない。それに君はとてもいいカウンセラーになれると思う」

「気持ち的には(仮)という感じなんですけど」

「とりあえず君の決めたことなら賛成の反対もしない。思うことはそのままに言うけれどね。そうそう、これからのことなんだけれど」

「覚えていますよ。私のことが解決したら仕事を辞めるつもりだと言ってましたよね」

私の進路が決まったから、もしかして村越さんは辞めちゃう?
まさかそんなことないよね、とちょっと焦りながら、次の村越さんの言葉を待つ。

「そうだ。僕は臨床心理士の資格を確かに持っていて、ここで雇われている。そして辞めるつもりだと言った。というか期間限定で働いているんだ。終わりは始めから決まってた。今まで話せなくてごめん」

「そうだったんですね。全然いいです」

私のせいで辞める訳じゃないんだ……。良かった。

「短期間しかいないから、朝会なんかで学生に向かって挨拶なんてしない。多分この学校の9割9分の人は僕を知らないと思う。それに月曜日と火曜日にはまた別のスクールカウンセラーの先生が来ているしね」

私はそれを知るわけがなかったし、村越さんに会えたのは本当に偶然が重なった結果なのだと思った。
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