相談室のきみと、秘密の時間
5. あの人と会ってるよ
村越さんと話したその日の夜に、私は勤め先の病院から母が帰ってくるのを待って、母が玄関に入るやいなや直ぐ村越さんの話題を持ちかけた。

絶対に直ぐ言わなければ、と決めていた。

そうしないとまたうじうじと悩んで母に迷惑をかけたくないと言い訳をして逃げ出してしまいそうになるから。

「今度、学校で会ってほしい人がいるの」

と言うと、母は何かを察したように黙ってリビングの椅子に座った。

「先生にってこと? 学校で何かあった?」

「先生じゃない。私、夏休みの終わり頃から学校の相談室に行っていて、会ってほしいのはそこに居た村越さんと言う男性のカウンセラーで.......。

でもあの人はただのカウンセラーじゃなくて。私に初めて真っ直ぐに向き合ってくれたんだ。

始めは進学先に悩んで相談しに行ったんだけど、今はそれだけじゃなくて人生とか、未来のこととか、自分のことを真剣に考えられるようになった。

だから私はお母さんともちゃんと話したいって思った。でも上手く言えるかは分からないから、村越さんもいる前で3人で話をしたいの。ダメかな」

「可愛い娘のお願いならいいに決まってるじゃない。先に日時を言ってくれればお母さんはいつでもいいよ」

「ありがとう」

母はあっさりと了承し、私は村越さんに頼んでその次の週の金曜日には学校へ母を呼ぶことにした。
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