相談室のきみと、秘密の時間
7. ひとりは嫌。だから一緒にいたいんです
慧悟さんが東京へと旅立ってしまってから2年以上が過ぎた。
3月も半ば、私は明日高校を卒業する。

あの日から今日までは慧悟さんと居た数ヶ月の濃密さに比べればあっという間に過ぎていった。

あの日私は家に帰ってから直ぐに部屋に引きこもった。
母も弟も察したように何も言ってはこなかったけれど、珍しく三人一緒にご飯を食べたり、ゲームに誘ってきたりした。

「大丈夫。なんにもないから」
「なんでもなくなんかないでしょう」

母は何も聞かずに抱きしめてくれた。
私はその優しさに救われたがぶっきらぼうに応えることしか出来ず、部屋に戻るとまたひとしきり泣いて過ごした。

そんな風にして過ごした四日目の朝に、私は奮い立ってアルバイトの電話をした。

高校生が直ぐに応募できるアルバイトはファーストフード店くらいしかなかった。私はとても緊張し、ただ応募の電話をかけるのに三時間以上を使った。

何とか無事に合格すると放課後や休日のほとんどを受験勉強とアルバイトに当てた。慣れるまでは大変だったけど、知らないことを学べてさらにお金まで貰えると考えれば、仕事は思ったより悪くなかった。
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