私の推し本【音楽エッセイ編】

【胸懐】(きょうかい)/TAKURO(GLAY)





永遠なんてない。
だからこそ、今この瞬間を大切に生きたい―。

私が人生で最も影響を受けたアーティスト・GLAYのリーダーであるTAKUROさんが、2003年デビュー10周年を前に自身の家族、恋愛、バンド人生について綴ったエッセイ。

発売当時高校3年生だった私にとって、色々考えさせられた大好きな作品です。

17歳でGLAYというバンドを結成し、共に青春時代を過ごし、共に夢を見てやってきた東京で、たくさんの苦しみや挫折を経験してやっと手に入れた成功。

けれどひきかえに失った存在もあって……。

かけがえのないメンバーとの揺るぎない絆を感じると共に、バンドとしての成功の陰に潜む苦しみや葛藤がリアルに書かれていて、ファンとして胸が苦しくなる部分もありました。

でも、読めば読むほど、GLAYというバンドに懸ける想い、音楽に対する情熱、自分の音楽人生と真摯に向き合う姿が感じられて、益々ファンになりました。

ただの芸能人の暴露本ではなく“エッセイ小説”として文章や表現のクオリティも高い作品。

やっぱり詞を書くひとは文章も綺麗だなと思います。

文庫版はGLAYと親交の深いラジオDJ、"やまちゃん"ことやまだひさしさんの熱いあとがきも必読の1冊です。

私は90年代のV系バンドブーム世代ですが、実は最初GLAYは苦手でした。

当時小学生だった私はLUNA SEAやX-JAPANなど、外見が奇抜で笑わない怖いお兄さん達のイメージが強くて。

そんな中1997年に3歳上の従姉が一気にGLAYにハマり、一緒に車で出かけるとGLAYの曲がカセットから流れ、カラオケに行くとGLAYを歌い、私もGLAYの曲を聴く機会が増えていきました。

さらに1998年、中学生になって入部した演劇部の先輩にも熱狂的なGLAYファンがいて、いつも部活でGLAYの話をしていて「私の周りみんなGLAY好きなんだな~」と気になり始め、そして夏休みに『SOUL LOVE』のMVを観てメンバーの仲良しな雰囲気と楽しそうな笑顔にキュンとしてファンになりました。

ちなみにGLAY派ラルク派で対立していた中学時代、私の周りは圧倒的にGLAY派が多く、クラスにも熱狂的なGLAYファンの女の子がいたのでよくその子とGLAYトークして盛り上がってました。

社会現象となった激動の99年の解散危機や00年のJIROさん脱退危機や05年の事務所独立問題を乗り越え、GLAYは今年2024年にデビュー30周年を迎えました。そして私もファン歴26年になりました。

メンバー自身が何よりもGLAYを想い、そしてファンファーストを貫きながら活動を続けてくれていることは本当に素晴らしいと思います。

「オワコン」ではなく、「一生解散しないバンド」として唯一無二の存在となりつつある彼らの魅力が、この本を読めばきっとわかります。



【一つ言葉にすれば、一つ何かが変わる ~願いが叶っていく58の気づき~】/藤田麻衣子



シンガーソングライター・藤田麻衣子さんがデビュー15周年記念に発売したデビューまでの経緯や現在までの活動を振り返るエッセイ。

全然メディア出演しない方でライブの時くらいしか彼女の人柄を知る機会がなかったのですが、飾らない素直な言葉で綴られていて、とても好感が持てました。

ほぼ同年代であることや、見た目はとてもほんわかした可愛らしい方なのにとても頑固で自分が決めたことは絶対譲らないところが私と同じだなと思ってさらに親近感がわきました。

ちなみに私が藤田麻衣子さんの楽曲を聴き始めたのは2008年。某通販サイトで高校時代から大好きなKOKIAさんの最新アルバムを予約した時に偶然おススメのリンクに表示されて視聴してみたら透明感のある綺麗な声が私の好みにピッタリだなと思ったのがきっかけです。

当時、川嶋あいちゃんや奥華子さんなどピアノ弾き語りで歌う透明感のある癒し系女性アーティストにハマっていたこともあり、同系統のアーティストだなと思って新作は必ずチェックするようになりました。

2011年、東日本大震災で大変だった時、長年一緒に暮らしている祖母が認知症とパーキンソン病の闘病で入院したり、職場の人間関係がうまくいかずカウンセリングにかかりながら毎日泣きながら通勤したり、私自身も精神的に限界だった時によく聴いていたのが『あなたは幸せになる』という曲でした。

歌詞の一つ一つが完全に自分の状況や心境ににリンクして、人生で楽曲を聴いてあんなに号泣したのはないんじゃないかというくらい泣きました。

このエッセイの中で『あなたは幸せになる』についてスタッフから歌詞を書き直した方がいいと言われたけど反発して直さなかったというエピソードがありましたが、本当に直さないでくれて良かったと思います。

今でも自分に自信がなくなったり落ち込んだ時に聴いている大好きな曲です。

藤田麻衣子さんの楽曲は短編恋愛小説を読んでいるようなストーリー性のある胸キュン楽曲と、言葉一つ一つに共感できる背中を押してくれるような人生応援ソングが魅力です。

興味のあるかたはぜひ一度聴いてみてください。



【空色の椅子】/梶浦 由記




社会現象になった『鬼滅の刃』の主題歌などを手掛けるアニソンクリエイター・梶浦 由記さんのミニエッセイを含んだ初の詩集。

元Kalafina大ファンの私としては絶対買わなきゃ!と即購入しました。

ほとんどメディアに出演されることがないので、梶浦さんがどんな生い立ちで、どんな想いであの美しい言葉たちを紡いでいるのか、同じ言葉を扱う作家を志す者としてとても興味がありました。

梶浦さんについては、アニメを全く観ていない私よりアニソンに詳しい高校時代の親友の方が先に存在を知っていて、お互い会うといつも「梶浦さんは本当に天才だと思う!」と語り合うくらい尊敬しているソングクリエイターです。

あの独特の言葉選びにはやはりオペラや海外文学の要素が詰まっているんだな、と知って納得。

特に2010年代以降のアイドルブームでとにかく「キミが大好き!キュンキュンする!」という恋愛史上主義なある意味幼稚な歌詞ばかりになってしまった日本の音楽界の中で、一線を画して文学的で情緒的な知性溢れる詞を書く方だなと思います。

ここで私が梶浦さん楽曲で歌詞が大好きな曲を紹介します。

 『胸の行方』/Kalafina

全編大好きな歌詞ですが、特に好きな2フレーズがこちら。

♪好きな本の最後の一行に込み上げる愛しさを
 誰に語ることもなく閉じ込めて
 胸はどこへ行くのだろう


子供の頃から読書好きで、まだネットもSNSも普及していなかった中学時代、まさにお気に入りの作家さんの作品を読み終えたあとに感じていたことを見事に言語化してくれたようなフレーズで鳥肌が立ちました。


♪夢ばかりを見ていると言われても
 ただ優しくなりたい
 目の前の人達を慰める言葉だけを見つけたい

ひとりひとりがこのフレーズのような気持ちで日々を過ごせたら、世界はきっともっと優しく平和になるのにな…と世界平和にまで発想が飛ばせるシンプルなのにとても深いフレーズだと思います。


 『アレルヤ』/Kalafina

小さな頃からずっと一緒に暮らしていた大好きな祖母が、5年間に渡る認知症とパーキンソン病の闘病の末亡くなった数ヶ月後にリリースされたこともあり、「命」をテーマにした歌詞の一言一言に泣けた楽曲。特に好きなのが↓のフレーズです。

♪明るい方へ明るい方へ
 きっともがいて何度も泣いて
 僕らは行く 僕らは行く

♪小さな命を振り絞って振り絞って
 振り絞って 君の未来へ アレルヤ

まさに「命の讃歌」と言える楽曲。
歌詞はもちろんのこと、3人の美しいコーラスワークも素晴らしいです。


『Melody 』/千葉 紗子

当初『虹色のMelody』というタイトルで書いていた『君と奏でる世界は、虹色に輝いている。』のクライマックスがなかなか浮かばずにいた時、親友が「Kalafinaと同じ梶浦さんプロデュースの曲ですごく良い曲があるよ」とオススメしてくれたのがこの曲です。歌詞が歌に人生を懸ける主人公の想いそのもので、一気にラストまで書けた思い出があります。特に好きなフレーズがこちら↓

♪せめて好きな歌をひとつ
 誰かに届く深さで歌っていたい

♪遠いあなたへMelody届けたい
 私の声で 私だけのMelody



【最後の言葉】/川嶋あい



人気番組『あいのり』の主題歌になった『明日への扉』が大ヒットしたI WiSHとしても活動していたシンガーソングライター・川嶋あいの半生を綴ったエッセイ。

本当にこんなドラマや小説みたいなことってあるの?と思うくらい壮絶な生い立ちと出来事の連続で、初めて知った時はとても衝撃的でした。

私が彼女を知ったきっかけは、IWiSHでした。

当時『あいのり』は観ていなかったけど、主題歌になった曲は必ずヒットすると言われていて、朝の芸能ニュースで紹介されているのを観て、なんて綺麗な声でピュアで可愛い曲なんだろうと感動しました。今でもよく聴いている大好きな曲です。

ソロ名義のデビュー曲『天使たちのメロディー』は歌手になる夢を叶えるためにたったひとり福岡から東京に上京して、挫折と絶望を経験した彼女がリアルな思いを綴った歌で、鬼気迫る想いを感じました。今思えばこのエッセイに綴られている事実があったからこそ、心に強く響いたのかもしれません。

恵まれた環境の中で当たり前のようにごく普通の女子高生として過ごしていた私にとっては、同年代の女の子なのにこんなにも違うのかと衝撃を受けた曲でした。

ちなみにGLAY以外で初めて自分からチケットを取ってコンサートに行ったアーティストでもあるので、思い入れが強いです。

アンコールの時に亡きお母さんのために歌った『ありがとう…』という曲で、涙で歌えなくなってしまった場面が今でも印象に残っています。



【夢の絆】/田家秀樹




この本に関しては、まず手に入れるのが大変だったという思い出があります。

発売日当日、いつも利用している近所の本屋に売っていなくて、親と車で何件か他の本屋に行っても売っていなくて、当時ライブで知り合って仲良くなったファン友達が私の分も購入してくれて自宅に送ってくれました。(学生がネットで気軽に買い物できる環境じゃなかったので、CDも本も今より手に入れるのが大変でした)

でも、苦労して手に入れたのに、結局最初から最後までフルでちゃんと読んだのは1回だけでした。

というのも、ハードカバーでページ数が多いのと、GLAYが精神的に一番辛かった時期のドキュメントなので、物理的にも内容的にも“重い”作品だからです。

でも、改めて読み返すと初めて読んだ時は難しくてつまらない(失礼)と感じていたビジネス的な部分の話も、今はそういう事情があったのかと理解できるようになったし、当時は読むのに勇気が必要だったメンバーのプライベート(恋愛・結婚)エピソードもすんなり読めました。

それだけ時が経ち私も成長したんだなと思います。

レコード大賞受賞を巡る解散危機、JIROさんの脱退危機を乗り越えて今があるんだと思うと、本当に感慨深いですね。

GLAYは昔から仲が良いバンドとして有名ではあったけれど、この作品を読み直して改めてメンバーの絆の強さを感じました。

2001年と言えばGLAY EXPO 2001“GLOBAL COMMUNICATION”の開催が印象的でしたが、私は東京スタジアム(現・味の素スタジアム)公演の2日目に参加しました。

突然登場したテルビスに驚いたり、初めて経験した野外スタジアム会場の盛り上がりに感動したり、TERUさんがHOWEVERを歌い直したり…色々思い出深いライブでした。

ちなみにEXPOは北海道・九州でも開催されましたが、当時高校生だったのでさすがに遠征できず…。

九州はアジア各国のアーティストを招いてのオールナイトライブということでニュースにもなっていましたね。

まだK-POPブームが来る前にすでに韓国のアーティストと一緒にライブをやっていたんだなと思うとかなり時代を先取りしていたイベントだったなと思います。

そして今でも忘れられない、記憶に残っている2002年のONE LOVE東京ドーム公演。

4days公演のうち2日目と3日目の公演を観ましたが、2日目の公演は初めて学校帰りにひとりで観に行ったライブでした。

当時学校の友達関係に悩んでいて精神的に本当に辛い時だったのですが、この日のライブはとにかくメンバーも会場もテンションが高くて、ものすごい盛り上がりでした。

何より会場の空気があたたかくて、私の居場所はここだと心底思えるような空間でした。

この日のライブで生きる力をもらって学校を休まずに無事に高校を卒業できたんだと思います。

そんな高校時代の思い出も一気に甦って来て、懐かしさと共にお互い色々なことを乗り越えて強くなって今があることに感謝したくなりました。


【別冊カドカワ 総力特集 Kalafina】




2015年、初の日本武道館単独公演開催のタイミングで発売されたファン必読の1冊。

3人のインタビューはもちろん、全ての楽曲で作詞・作曲を手掛けているプロデューサー・梶浦由記さんが語るKalafina誕生秘話、ライブのバンドメンバーや関係者が語るKalafinaの魅力など読み応えたっぷりの内容です。

小学生の頃からJ-POP大好きな私ですが、「これはもっと多くの人に知ってもらうべき!」と思うアーティストの中でここ数年ずっと周りにイチオシしていたのがKalafinaです。

日本武道館単独公演や全国ツアーも開催するほど知名度が上がりましたが、私が聴き始めた時はアニメファンしか知らないマニアックなアーティスト的なイメージが強かった気がします。

私はアニメを全く観ていないので最初アニソンアーティストであることを知らず、2011年に偶然TVで流れていたアルバム『After Eden』のCMをきっかけにファンになりました。

CMで流れていた『Eden』という曲を聴いた時、なんて綺麗な曲だろうと思って、一瞬で
「これは絶対私の好みにハマるアーティストだ!」と思いました。

アニソンというとどうしても萌え系オタク系のイメージが強いですが、Kalafinaは全く違って、楽曲と歌のクオリティが高く、壮大で幻想的な世界観が素晴らしいです。

クラシック・オペラ的な要素が強い曲も多いので、世代を問わず幅広い年代の方が聴けると思います。

Kalafinaの魅力は何と言っても3人の美しい歌のハーモニーです。

Wakanaさんの透明感・清涼感溢れる高音と、Keikoさんの温かさと妖艶さを兼ね備えた低音、Hikaruさんの感情豊かな中音がとても絶妙なバランスで、生で聴くと本当に感動します。

2019年に残念ながら解散しましたが、復活のニュースを見て歓喜した直後に梶浦さんの声明を見て、なんとも言えない気持ちになりました。

梶浦さんがいないKalafinaはTAKUROさんがいないGLAYみたいなもので、もはやKalafinaじゃないような気がします。

元々実力派の3人だから、梶浦さんの曲じゃなくても素晴らしいクオリティになると思うし、逆に梶浦さん楽曲じゃないKalafinaがどんな路線の楽曲を歌うのか興味はあるけれど…。

個人的にはKalafinaファンになる前からファンで同じアニソン×声楽クラシック枠で活動しているKOKIAさんに楽曲提供してほしいです。


【M 愛すべき人がいて】/小松成美



中学・高校時代、GLAYと同じくらい社会現象と言われるほど人気だったのがあゆでした。私は当時からご本人のキャラが苦手で、正直歌も上手いと思ってはいなかったけど、楽曲は大好きで新曲が出ればレンタルしてよく聴いていました。(当時はまだダウンロードではなくレンタルが主流でした)

当時、GLAY目当てで歌番組を観ているとあゆも必ずと言って良いほど出ていました。

『Deep Love』など初期のケータイ小説はあゆ人気から生まれたのでは?という記事が出たくらい、当時の10代女子はあゆに影響を受けている人が多いと思います。(実際、私もあゆをイメージした歌姫主人公の作品を書きました)

そんなあゆの『M 愛すべき人がいて』が話題になった発売当時は、自ら不倫告白って落ちる所まで落ちてしまったんだな…とかなり残念に思いました。

ネットでの反応も酷評が大半で、私も『でしょうね』と思っていました。

でも、いざ書籍を読んでみて作品に対するイメージが変わりました。

この作品は、初期のケータイ小説のような号泣悲劇恋愛作品でもドロドロの不倫作品でもなく、あゆとあゆの楽曲をモデルにした半フィクション芸能系作品だと捉えれば、私は好きな作品だなと思いました。

ただ、それは私があゆ世代だけどあゆの熱狂的ファンではないからだと思います。

当時から熱狂的ファンで楽曲を完全に自分や自分の人生とリンクさせて聴いていた人にとっては、大好きな曲にまつわる思い出が汚されたように感じて受け入れられないかもしれません。

ケータイ小説っぽい作品が好きな人には良いと思います。

ちなみにドラマも途中から観ましたが、正直あゆ役の演技はめちゃ下手だし、マサは怒鳴ってばかりだし、ツッコミどころ満載で逆にそれが面白くてつい観ちゃいました(笑)

あとはなんと言っても田中みな実さんの怪演ですね(笑)「許さな~~い」はかなりインパクトあって笑いました。

なんだかんだ言っても90年代後半に青春時代を過ごした世代なので、当時はJ-POP界も盛り上がっていたし懐かしかったです。
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