聖なる夜に贈り物
ポツリとそう呟けば、あっという間に写真の中の二人がぼやけてくる。

私が目元を手の甲で雑に拭うと同時にテーブルの上に置いていたスマホが震えた。

──『ご飯たべにくる? どうせ暇でしょ?』

メッセージの相手は同じ大学の天文サークルの山下純(やましたじゅん)だ。

純とは同じ英文科で地元が近かったこともあり、すぐに打ち解けた。

私にとって一人しかいない所謂男友達というやつだ。

別に顔もタイプじゃないし恋愛感情は皆無だ。

でも話してると楽しくて心地よくて、よく考えたらサークル内では一番よく話しているかもしれない。

(でも今日はイブだし、さすがにそんな気分になれないな)

『ごめん、今日は……』

私がそう入力してる側から純からまたLINEがくる。

──『日香の好きな親子丼作るけど』

「マジかぁ」

正直、彰人と行こうと話していたクリスマスディズニーに行けない上に、彰人との写真を見つめて感傷的になっていた私だが、純の親子丼と聞いた途端、お腹の音がぐーっと鳴る。

「てゆうかイブならチキンじゃないの?」

私はひとりでツッコミを入れながらもダウンジャケットに目をやる。


「純の親子丼絶品なんだよね……それにクリスマスイブにカップラーメンも忍びないし」

私は純に『いまから行く』とスタンプもなしにそれだけ送ると、着替えることなくモコモコのルームウェアにダウンジャケットを羽織り、斜め向かいのアパートに住む純の元へと向かった。
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