聖なる夜に贈り物
純のアパートに到着し、インターホンを押そうとした瞬間、玄関の扉が開く。

「え? 私が来るの見てたの?」

「ストーカーかよ、俺をなんだと思ってんの」

眉を顰めた私を見ながら、純があきれたような顔をする。

「もうすぐ雪が降るかもだから傘持ってこいって言いたかったのに、LINE既読にならないからまだ家居るなら言いにいってやろうかなって」

「あ、ごめん。そうなんだ。でももし雪降ったら純の傘貸してよ」

「俺、傘一本しかなくてそれも大学に忘れてきた」

「え〜っ」

「日香に文句言われたくないけどな。ま、いいや。食ったらすぐ帰れ」

純はダウンジャケットを脱ぎながら、私にすでに玄関先に用意されていたスリッパを指差すとリビングへと先に歩いていく。

リビングに入ればすぐに出汁とお砂糖の混ざったような匂いが鼻を掠める。

「いい匂い……」

「そこ座って、もうできるから」

「うそ、はやっ」

「シゴデキなんで」

「はいはい」

いつものようにそんな掛け合いをしながら私は二人がけのダイニングテーブルに腰掛ける。


彰人と別れてから純の家にくるのはもう5回目だ。

いつもここに来ては料理が得意な純のご飯を食べながら、未練がましく彰人の話を聞いてもらっていた。

純の部屋は相変わらず整理整頓がきちんとされていて、センスのいい家具がうまく配置されている。
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