聖なる夜に贈り物
「どうしようもないじゃん……人の気持ちなんて……どうやっても変えられない。変わらないもん」

「…………」

でもどこかでまた私の方が良かったといって彰人が帰ってくるような気がして、私は彰人の荷物がなかなか捨てられなかった。

それほど恋に溺れていた。

初めて会ったときからなぜだか惹かれて、彰人から付き合ってほしいと言われた時はこの人に会うために生まれてきたんだなんて、そんな、らしくないことを考えるくらい好きだった。

そんな私に訪れた突然の恋の別れは、もう二度と恋なんてできない、そう強く思うほどに私の心の真ん中はいまだにぽっかり穴があいたままだ。

「おまちどうさま」

純がテーブルに親子丼を二つ置いて麦茶を注ぎ入れる。

「冷めないうちに食えよ」 

「うん……」

親子丼を一口くちに含むと美味しさが口内に広がって、何故だかころんと涙が転がった。

「……おいしい」

「良かった」

純はそう言うと、黙ってティッシュの箱を私の手元へ置いた。

私はティッシュで涙を拭いながら親子丼を黙々と食べていく。
< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop