聖なる夜に贈り物
「……ご馳走さまでした」

そう言い終わるとお腹は満たされたのに、すごく虚しくて悲しくて涙が止まらなくなる。

「……日香にはもっといい人がいる。ちゃんと日香を大事にしてくれる人」

「いい加減なこと言わないで……っ……」

「いい加減じゃないよ」

純はそう言うと、私をまっすぐに見つめた。

「俺は日香が好きだから」

(──え?)

一瞬、聞き間違えたのかと思ったが純の瞳は今までみたことないくらいに真剣だった。

私の涙はあっという間に止まり、こんどは心臓がとくとく駆け足になる。 

「あ、の……」

どうしたらいいのかわからない私に純がバツの悪そうな顔をする。

「ごめん、言うつもりなかったのに。日香をこんな泣かせる奴いると思うと、なんか腹が立って……その、つい」

純はガシガシと柔らかい黒髪をかくと眉を下げた。

「受け取ってもらえない想いってわかってるからさっさと断ってくれていい」

そう、純はタイプじゃない。恋愛感情なんてない。

でもなぜだろう。なせだかわからないのに、断る言葉が出てこない。好きじゃないけど嫌じゃなくて、純の気持ちが心の穴の中にすっと入ってくる。

私は考えがまとまらない中、純を待たせるのも悪いと感じてゆっくりと口を開く。
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