私たちの恋風は、春を告げる
−斑雪 はだれゆき−


それから数日後の、帰り道。


「お前今日の体育でなんかあったのかよ」


「……え?」


帰り道、ぼんやりと歩いていた私は少し先をあるく冬紀の声に、顔を上げた。


「体育の後の授業、遅れて戻ってきただろ」


「それが、実は持久走の途中で転んじゃったの。今日に限って長ズボン忘れてきちゃって短パンだったから、膝血だらけになっちゃって。保健室で手当してもらって、しばらく休んでから戻ったから、ちょっと遅れちゃった…ほんと、転んだのなんて何年振りかわかんないくらい」


へへっ…と、苦笑いを浮かべる私に、冬紀は眉にしわを寄せている。


体育は基本男女別だし、今日男子は体育館で授業で、女子は校庭での授業。


こんな寒い中持久走とか、ほんとに嫌なんだよなー…


でもあんなに思いっきりこけたのなんて、ほんとに久々だった。


膝にジーンと滲みる痛みも、ちょっとだけ懐かしかったし。


でも普通に走ってたら急に左足の力抜けるから、それでバランス崩して転ぶはめになった。




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