私たちの恋風は、春を告げる
………左手に、力が入らない…
小刻みに震える左手を、止めることができなかった。
「……どうした?」
冬紀の声に、私はぱっと左手を後ろに隠して、冬紀を見る。
訝しげな表情で、こっちを見ていた。
「……あ、ううん。何でもない!てか、今日の私一段とバカだよねー。手滑らせちゃった…」
右手には持っていたカップを置き、後ろに隠した左手を力一杯握った。
震え止まれ…止まれ…
そう、心の中で何度も唱える。