First Last Love

◇◇村上健司◇◇ 邂逅


「村上―! いい加減にしてよ! いつまでたってもおわんないじゃな……げ?」

 教卓の前で月城一颯(つきしろいぶき)が手にした雑巾を振り上げる。
箒をバットがわりに空雑巾(からぞうきん)をボールがわりに、やっていた教室内野球。
俺の打った(からぞうきん)が放物線を描いて月城の頭にひらーりとかぶさる。

「臭いっ!」
「けっ。鈍いやつめ」
「村上っ! もおおおおお! 怒ったぁー」

 月城が雑巾を手に、短いチュールスカートをものともしない大股でこっちに突進してくる。
肩より少し長いサラサラの髪が、校舎の窓から入る午後の陽の光に透け、すごく綺麗だった。
俺は机の間をぬって逃げる。月城は追いかけてくる。

「いたっ!」
 月城が机横のフックに吊っていた給食袋かなんかに引っ掛かり、豪快に転ぶ。

「月城っ?」

 俺はすぐさまUターンして月城の元に戻った。

「骨が折れた」

 机に寄りかかって腰をさすっている。

「嘘つけ!」
「でも痛いのはホントだもん。もう真面目にやってくれないと、女子の負担がめっちゃ増えるんだからね」

 俯いて悲しそうな口調で呟く。

「わかったよ。ちゃんとやる。ゴミ、捨ててくるよ」
「明日からもだからねっ!」
「わかったよ。月姫さま」
「またそれでごまかすー!」
「ごまかしてません。月姫さま」
「ホントだなっ?」

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