夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
最終日の出会い1
今日は最後の出社日。
朝の満員電車に揺られ、吊革につかまって見える外の景色ともお別れだ。
莉愛は四年間、大好きだったチョコ菓子で有名な千堂製菓の契約社員として働いていた。
この沿線のこの時間、朝の混雑した電車に乗るのも今日で終わりかと思うとなんだかそれもつらいと思えなかった。
しかも、普段は立っている座席に今日はすんなり座れてしまった。これも頑張って働いてきたご褒美かもしれない。
次の駅で目の前に立つ人が変わった。
二週間前くらいから、毎日この車両で見かけていた人。背の高い綺麗な顔立ちの男性だった。
携帯電話を見ている人が多い中で、いつ見ても背筋を伸ばして遠くを見ているのが印象的だった。
それが今日の彼は下を向いて辛そうに肩で息をしていた。
いつもと違う、絶対に具合が悪いんだと確信した。
莉愛はすぐに立ち上がり、目の前の彼の腕を引いて自分の代わりに座席へ座らせた。
「……っ!」
驚いたんだろう。赤い顔を上げてこちらを見た彼に向かって、人差し指を立ててシーっと言った。
満員電車だ。ほとんどの人が目の前の携帯の画面に夢中となって気づかないでいる。
彼は莉愛と一緒で三駅先の駅で降りる。そのことを知っているのだ。
駅に着いた。
莉愛は彼の為に通り道を作るようにして人波をかきわけ出口へ向かった。
後ろをついてきた彼の腕を引いて電車を降りた。心配だったからだ。そのまま彼の腕を引っ張ってホームのベンチへ行く。
「……!」
「どうぞベンチに座ってください」
「は……君……」
朝の満員電車に揺られ、吊革につかまって見える外の景色ともお別れだ。
莉愛は四年間、大好きだったチョコ菓子で有名な千堂製菓の契約社員として働いていた。
この沿線のこの時間、朝の混雑した電車に乗るのも今日で終わりかと思うとなんだかそれもつらいと思えなかった。
しかも、普段は立っている座席に今日はすんなり座れてしまった。これも頑張って働いてきたご褒美かもしれない。
次の駅で目の前に立つ人が変わった。
二週間前くらいから、毎日この車両で見かけていた人。背の高い綺麗な顔立ちの男性だった。
携帯電話を見ている人が多い中で、いつ見ても背筋を伸ばして遠くを見ているのが印象的だった。
それが今日の彼は下を向いて辛そうに肩で息をしていた。
いつもと違う、絶対に具合が悪いんだと確信した。
莉愛はすぐに立ち上がり、目の前の彼の腕を引いて自分の代わりに座席へ座らせた。
「……っ!」
驚いたんだろう。赤い顔を上げてこちらを見た彼に向かって、人差し指を立ててシーっと言った。
満員電車だ。ほとんどの人が目の前の携帯の画面に夢中となって気づかないでいる。
彼は莉愛と一緒で三駅先の駅で降りる。そのことを知っているのだ。
駅に着いた。
莉愛は彼の為に通り道を作るようにして人波をかきわけ出口へ向かった。
後ろをついてきた彼の腕を引いて電車を降りた。心配だったからだ。そのまま彼の腕を引っ張ってホームのベンチへ行く。
「……!」
「どうぞベンチに座ってください」
「は……君……」
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