夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
 部長がいなくなると美穂は言った。

「莉愛がやめたら、私ここで契約社員続けていけるか心配よ」

「そんなこと言わないで……美穂に辞められたら上は大変よ」

「所詮、契約社員って便利屋さんだもん。社員さんには顔色伺って頼めないことも私達には平気で頼んでくる。お給料が割に合わない」

「確かに……その通りね」

 入ってわかったことだが、契約社員を雑用係と思っているところが企業風土にある。面倒なことを頼むのは当たり前だと思っているのだ。

「莉愛は家の仕事って、戻ったらどんなことをするの?」

「ありとあらゆることよ。今と変わらない」

「えー?」

 結局夕方まで入力をしてその日が終わってしまった。

「莉愛、元気でね」

「うん。美穂もね」

 美穂は今日週末なのでデートだと言っていた。先日、ふたりで飲みに行って、お別れ会はすんでいた。

 莉愛は、携帯を確認した。

 この会社に誘ってくれた葛西から連絡が来ていた。彼とは今日食事の約束をしていた。
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