夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
 潮見部長は二度も私を人事に正社員へするように動いてくれていた。

「とんでもない、ありがとうございました。部長の下で働くのは楽しかったです」

「あなたはとてもいい人だし、営業先からも評判がいい。うちの商品への愛着もある。できれば辞めないで続けてほしかった。いずれは絶対正社員になったと思うの。うちの人事おかしいわよね。皆今年はいい人ばかりが試験を受けていたから、全員不採用とか、上司は皆怒ってた。推薦するのだって大変なのにね」

「そうですよね、二年もやっていただいてすみませんでした」

「ごめん、そういう意味じゃないの。本当に根回しも足りてなくて申し訳なさでいっぱいよ。あなたはちっとも悪くないから気にしないでね」

 莉愛は思った。部長は本当にいい人だ。

 こんな美人で二人の子持ち。なのにバリバリ働いてカッコいい。憧れの存在だ。

「ありがとうございます。しばらくは実家のほうで頑張ります」

「頑張ってね。おうちの方もうまくいくといいわね」

「ありがとうございます。部長もお元気で、無理をしないで下さいね。ママが元気じゃないとお子さんが泣きますよ」

「ありがと。そんなこと言ってくれるのは本山さんだけよ。ああ、寂しいわ」

 潮見部長は泣きマネをして莉愛を送り出した。
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