夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

再会と約束1

「だからね、子供が買えるチョコだからここのチョコが私は好きなの。その手軽さも、昔から変わらない安心感も大好きなのに、あの人は何もわかってないのよ……」

 莉愛は葛西を目の前に焼き鳥を頬張りながら、今日最後の営業先担当者に言われたことを話しながら文句を垂れていた。

 葛西はそんな莉愛を見ながら飲んでいる。

「本山は、昔っからうちのチョコ大好きだもんな。あのチョコがうちの商品だと知った時は驚いたな。俺は叔父のいるこの会社に兄弟そろって入ることが決まってたからね」

「いいわね、葛西君は……。チョコも好きじゃなかったのに、最初から何も考えず無期雇用で働けてさ」

 莉愛はいけないと思いながらも、つい酔いも回って本音が出てしまった。

「おい、お前らしくない言い方すんなよ。お前のこと、潮見部長が絶対正社員にしてみせるって言ってたらしいじゃん。家のためとはいえ、もったいない」

「何がもったいない、よ。騙されないから。絶対正社員には最初からならないと無理なの」

「よし決めた!俺がお前を正社員にするよう叔父さんへ直談判してやる。お前なら大丈夫だ。根性もあるし、顔もそこそこいい」

 バン!莉愛が机をたたいた。葛西はびくっとした。

「あ・の・ね。何それ?顔や根性も関係ないよ!それに元はと言えば期間契約社員になったのも、いずれ正社員になれるって葛西君に誘われたから……そのまま四年もいるとは思ってなかった」

「いや、本当にごめん。もっと早くなんとかしたかったんだけどさ。それとなく叔父さんに話す度言われるんだよ。うちって契約社員大勢抱えてるじゃん。そういう会社だからとか言うんだ」
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