夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
 酔いに任せて本音を言い過ぎた。会社の人に聞かれたくなかった。

 祐樹がグラスを持ったまま下を向いて言った。

「そんなことないよ。いい話だった。変わらないのがいいとか、子供も買えるのがいいとかね。お茶を使った菓子の話が特に興味深かった」

「それは……」

 口ごもった莉愛を見て、祐樹は笑顔を見せた。

「僕もね、君と同じ意見なんだよ。子供も買える手軽さと変わらない味。新しい商品もいいけど、昔からある商品を改良することは反対なんだ」

 莉愛は嬉しそうに目を輝かせた。手を打ち合わせて祐樹の方を見た。

 祐樹は息を飲んだ。キラキラした目でこちらを見ている。なんというか……吸い寄せられる。

「そうでしょう?私もそう思うんです。子供が買っていた商品をリニューアルしてお洒落なパッケージで大人向けの価格帯ってどうなんでしょう。うちの看板商品を大切にしてほしいんです」

「でも売り上げがさ、いまいちなんだろ」

 尚人が言う。莉愛は言い返した。

「だから、売り方を変えるの。今のスーパーは画一的な売り場が多いから難しいかもしれないけど……パッケージを工夫したり、アニメやゲームの人気キャラクターとタイアップしたり。商品の中身は変えないで子供の心をつかむ売り方をしてほしいの」

「本山さん。君はなかなか面白い。なあ、祐樹。彼女絶対いてもらったほうがいいと思わないか」

 修二が言う。祐樹は莉愛を見て微笑んだ。莉愛はドキっとして目を逸らした。
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