夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
「あと、抹茶……さっき何か見ながら言ってたよね」

「それはその……」

「見せてくれないの?」

 莉愛は祐樹の好奇心満載の目に陥落してしまった。おずおずとカバンからスケッチブックを出した。

 祐樹は嬉しそうに受け取ると、膝の上でスケッチブックを広げた。そして一瞬息をのんだ。目を奪われた。想像以上だったのだ。誰にも見せたくない。

 祐樹は黙ったまま膝の上のスケッチブックを凝視している。莉愛はそんな祐樹を心配そうに横から覗いている。

「おい、祐樹。俺にも見せろ」

「ちょっと黙ってろ。君の作りたいものってこれ?」

「そうです」

「なるほど……とても興味深い。また見せてもらうかもしれないからその時はよろしくね。はい、ありがとう」

「え?」

 スケッチブックを畳むと彼は莉愛に返した。

「そうだ、君のハンカチは抹茶の香りがしたんだ。どうしてだろう?」

 莉愛が恥ずかしそうに赤くなった。

「……あ、それは……うちがお茶問屋なので家に香りが充満しているんです……すみません、臭かったですか?」

「臭くなんてないよ。いい香りだった。君の家は問屋業だけ?店で何か作ったものを販売もしてるの?」
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