夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
「保冷剤も、ハンカチもたくさんあるので、返してもらわなくて大丈夫です。それに私、この電車を使うのは今日までなんです。だからもう会わないから気にしないでください」
「え……」
「申し訳ないけど先に行きます。お大事に」
「あ、ありがとう……」
彼に微笑み返すと背中を向けて走り出した。
☆ ☆ ☆
祐樹は具合が悪かったので、連絡先を聞く元気もなかった。
こちらを何回か振り返りながら手を振り走り去る彼女の背中を見た。後ろで結んだ長い黒髪が揺れている。
祐樹は手にしたハンカチへ眼を落とした。可愛らしい花柄のピンクのハンカチだった。
またおでこに乗せてふうっとため息をついた。
少し経って、ホームの自販機へ向かい水を買った。
同じベンチへ戻り、バッグからピルケースを出すと薬を出して水と一緒に飲んだ。
携帯が震えているのに気づき、画面を見た。
彼はおでこに乗せていた保冷剤をポケットにしまうとヨロヨロと立ち上がった。かなり熱があると自覚した。
駅の東口にあるロータリーの車寄せまでようやく歩いた。
出てきた祐樹を見つけた修二は車から出てきた。
「おい、どうしたんだ?遅いじゃないか……既読になったまま連絡がないからさっき電話したんだぞ。もしかして寝坊か?」
「……いや、すまん」
「え……」
「申し訳ないけど先に行きます。お大事に」
「あ、ありがとう……」
彼に微笑み返すと背中を向けて走り出した。
☆ ☆ ☆
祐樹は具合が悪かったので、連絡先を聞く元気もなかった。
こちらを何回か振り返りながら手を振り走り去る彼女の背中を見た。後ろで結んだ長い黒髪が揺れている。
祐樹は手にしたハンカチへ眼を落とした。可愛らしい花柄のピンクのハンカチだった。
またおでこに乗せてふうっとため息をついた。
少し経って、ホームの自販機へ向かい水を買った。
同じベンチへ戻り、バッグからピルケースを出すと薬を出して水と一緒に飲んだ。
携帯が震えているのに気づき、画面を見た。
彼はおでこに乗せていた保冷剤をポケットにしまうとヨロヨロと立ち上がった。かなり熱があると自覚した。
駅の東口にあるロータリーの車寄せまでようやく歩いた。
出てきた祐樹を見つけた修二は車から出てきた。
「おい、どうしたんだ?遅いじゃないか……既読になったまま連絡がないからさっき電話したんだぞ。もしかして寝坊か?」
「……いや、すまん」