夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
 工場と大きな日本家屋が見えてきた。祐樹は驚いたように立ち止まって感嘆した。

「大きな家じゃないか。君はお嬢様だろ」

「やめてください。この本山茶舗は母の実家です。当時の母は多分お嬢様でしたが、私は全然違いますよ。家業が大変で、他社で契約社員になるくらいです」

「いやいや、なんだかお宝がこの蔵にはたんまり入ってるんじゃないか?」

「たんまりお茶が入ってます。買ってくれますか?」

「そうか。一度入ってみたいな」

「いいですよ、いつでもどうぞ」

「楽しみにしてる。じゃあ、おやすみ。必ず連絡する」

「はい、ありがとうございました……祐樹さんも無理なさらないでお大事に」

「ああ、ありがとう」

 彼は手を振りながら、元来た道を駅の方へ向かって歩いて行った。

 翌週木曜日。

 祐樹は自分の仕事がようやく少し片付いたところで、修二に少しだけ休み時間をもらった。

 早速、莉愛がいた営業二部へ行った。彼の目当ての人物は席に座っていた。ラッキーだった。

「潮見部長。ちょっといいですか?」

 彼女は机から顔をあげて、祐樹を見た。

 そして驚いたように目を見張った。立ち上がると祐樹のところへ来た。
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