夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
 莉愛はお茶の香りはわかるのだが、香水などは付けないからあまり詳しくないのだ。

「この車、なんだかチョコのいい香りがしますね」

「あはは、僕は車で会社の商品の試食をしたりするからね。匂いがついてしまったんだろう」

「お身体はあれから大丈夫ですか?」

「ああ。おかげさまで良くなった。時差とこの高温多湿にようやく慣れてきたよ。帰国して最初は身体が受けつけなかったのかもしれない。さてと、行先はお任せいただいてよろしいですか、お嬢様」

「ええ。全てお任せいたします」

 素敵な笑顔でこちらをちらっと見た。

「お嬢様、助手席ですのでベルトをしてください」

 そう言うと、彼が覆いかぶさるようにして莉愛のベルトを引っ張った。すごく近い。びっくりした。

 彼は赤くなっている莉愛を見てくすっと笑った。すごい顔面偏差値ビームが飛んで来た。またびっくりして目をつむった。

「さて、出すぞ」

 車は走り出した。

 莉愛はお店に入った時から周りの人がこちらを見ているような気がした。

 いや、間違いない。あっちの女性達もこっちを見てひそひそしている。

 その割に、祐樹は落ち着いている。なんだか、自分だけ自意識過剰みたいで嫌だなと莉愛は頭を振った。

「何してんだ?」

「もしかして、祐樹さんってストーカー被害もあったと言っていましたよね。人に見られるのも慣れてます?」
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