夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「は？」

　彼は初めて気が付いたというかのように周りをぐるっと見ている。彼と目の合った女性が赤くなっている。

「ストーカーはいないと思う。まだ帰国して三週間だ」

「そういう問題じゃないと思いますけど……」

「なんだよ？」

「いえ。今更でしたね。私が電車で祐樹さんに気づいていたように、周りは大勢あなたに目を奪われるということがよくわかりました」

　彼はふーっと息を吐いて、髪をかき上げた。すごい色気だ。

「気にするな」

「はあ……そうですか」

　料理が運ばれてきた。莉愛は久しぶりの素敵なフレンチに嬉しくてすごい勢いで食べ始めた。そんな彼女を見て、祐樹も嬉しそうにしていた。

「それで、食べながら聞いてくれ」

「はい……あ……」

　莉愛はちょうど大きな口を開けてお肉を入れたところだった。

「結論から言うと、君は正社員として復帰が決まった。部署は前のところではなく、僕の下になる。海外事業部で働いてもらう」

「っ！げほっ！うっ……」

　莉愛は驚きすぎて肉がのどに詰まった。水に手を伸ばし、ごくごくと飲んだ。

「はー」