夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
　莉愛はこくんと頷いた。そして呟いた。

「どうしてこうなっちゃうのかな？私って運が悪いんですね。正社員になる道を祐樹さんがやっと作ってくれたのに……」

「じゃあ、その政略結婚をなんとかするしかないんじゃない？」

　あっけらかんと言ってにっこり笑っている。

　一体この人何を考えているんだろう。祐樹さんってやっぱりどこか変わってる。

　莉愛は勢いよく言い返した。

「なんとかできれば最初からお断りしてますよ」

「なんとかしようとしてないだろ。見合いを無条件で受けるなんてすでに諦めてる。念願の正社員になれるんだぞ。お茶の商品開発も夢じゃないかもしれない。これからという時に、他の奴と結婚して逃げるなんて君らしくもないな」

　びっくりして莉愛は声が出なかった。

　逃げるという言葉に息をのんだ。そんなつもりは莉愛には全くなかった。

　祐樹は返事をしない彼女に追い打ちをかけた。

「聞いている？」

「……っ、逃げてない！条件のある政略結婚だから、簡単に断れないって言ってるじゃない！」

　莉愛は噛みつくように反論した。祐樹はそんな莉愛を見て、静かにほほ笑んだ。

「ちょっと待っていて……」

　にこっと祐樹は微笑むと携帯電話を持ったまま席を外してしまった。

　１０分後、祐樹は戻ってきた。
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