夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
「ああ、お待たせ」

「あの……」

「とりあえず、連絡待ち」

「連絡って?」

「花邑のほうから君のところとの縁談を断るようにもっていかないといけないからね。少し新しい人参をぶら下げてあげて、本山茶舗と君から気を反らせないと……ま、どうなるかはまだわからない」

「は?あの、祐樹さんそれっていったい……」

「ああ、君を正社員にしたのも上にちょっとコネがあるって言っただろう?今回は違うコネのほうに聞いてるけど……」

 莉愛は驚いた。コネって何だろう?

 確かに、あれだけ頼んでも正社員にしてもらえなかった莉愛をあっという間に正社員にしたぐらいだ。

 相当のコネがあるんだろう。海外事業部長としての力量も有名だ。

「うまくいくと花邑さんが縁談をとりやめるってことですか?うちを祐樹さんが救ってくださるんですか?」

「救う?人に頼るのはだめだな。自助努力と意識改革をして頂こう。だいたいさ……君はこれだけ花邑主導の政略結婚で、断りたいと君が言ったとして自分の意見が通ると思ってる?」

「え?」

「ブランド名を残すこと以外は旨味を全部吸い取られる。それに大手の茶舗の縁談を断ったら、おそらく君のところは立ちいかなくなるだろう。狭い世界だからね。何をしてくるかわからないよ」

「……そんな……」

 そうかもしれない……。莉愛は目の前が真っ暗になった。
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