夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
 莉愛はその笑顔と続く言葉にびっくりした。

「それとね、君の纏うお茶の香りは具合の悪かったあの時の僕にとって癒しの香りだった。お茶は君を構成する一部分なんだろうな。そして、お茶を守るために君が必死で考えていることもとても興味深くて好感が持てた。僕は君と君を構成するものが丸ごと欲しい」

「……!」

 突然射抜くような瞳を向けられた。息をのんだ。最後の一言で胸を貫かれた。

 莉愛は顔が赤くなったのを自覚して黙り込んだ。頬を両手で抑えた。

 こんな風に……はっきりと自分が欲しい言われたことはなかった。

 好きだと言われたことはあるがこんなに違うものだとは思わなかった。

 父は娘の自分よりお茶を優先したが、この人はお茶が私を構成している一部だと言った。それだけで嬉しかった。

 彼がいいと直感的に思った。

 彼の今の瞳を見たら、無条件で陥落してしまいそうだった。

「祐樹さん……その言葉は反則です……私……」

 こちらをちらりと祐樹は見た。そしてくすっと笑った。

「なに?反則でも勝ちは勝ちなんだよ。じゃあ、僕と結婚しようか」

「そういうことは本当に勝負に勝ってから言ってください」

「言ったな。言質取ったぞ」

 莉愛は一息吸って、答えた。

「はい。あなたとなら結婚してもいいかもしれない。私も直感……ですけどね」
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