夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

　莉愛は自分が座るべき座布団を祐樹に譲り、自分はその横に座った。

　莉愛の母が祐樹へお茶を出した。

　莉愛の父は祐樹を観察するようにじっと見ていた。

　祐樹は見られることに緊張する様子もまるでなく、出されたお茶をすすって涼しい顔をしている。

　それに対して花邑の御曹司はずっと祐樹をにらんでいる。祐樹がすでに一枚上だと莉愛も莉愛の父もわかった。

　莉愛が祐樹の目を見たので、彼はうなずいて話し出した。

　祐樹はお茶碗を置いて、莉愛の父の方を向いた。

「本山さん。突然ですが、僕も先ほど莉愛さんにプロポーズしました」

「ええ？！」

「なんだと？！」

　莉愛の母はびっくりしたんだろう、音を立ててお盆を落とした。

　花邑の御曹司がいきり立った。莉愛の父はため息をついた。

「な、何を言っているんだ、莉愛さんは僕と結婚が決まっているんだ。はっきり言ってやれ、本山さん」

　莉愛の父は重たい口を開いた。

「花邑さん。お話は頂きました。でも、正式なお見合いはまだですし、結婚は受諾していません。それと、失礼ですが佐伯さん。娘にプロポーズとはどういうことでしょう？娘からあなたの話を聞いたのは初めてです。交際していなかったんですよね」

「そうですね。実は彼女と会うのはまだ今日が三回目です。実は、僕はアメリカから二週間前に戻ったばかりなんです。でも、彼女と初めて話した時から、彼女は僕にとって特別な人だとピンときました。直感です」

「はあ、祐樹さん……」